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五つの誓い

しあわせの家寒川 施設長

  「五つの誓い」とはご自身に実際に起こった体験を「命の授業」として、全国で講演活動を続けている腰塚勇人(こしづかはやと)さんという方の言葉です。   腰塚さんは大学卒業後、天職と思えた中学校の体育教師になり、学級担任やバスケット部顧問として充実した教員生活を送っていましたが、2002年3月(37歳)、スキーで転倒して「首の骨」を折るという大事故に見舞われます。幸い手術により一命は取り止めますが、一週間たっても首から下は全く動かず、担当の医師からは「一生寝たきりか、車椅子の生活になるでしょう」と宣告されます。絶望の余り腰塚さんは舌を噛んで自殺を図りますが、余りの痛さに未遂に終わります。そんな死ぬことばかりを考えていた腰塚さんに生きる勇気を与えてくれたのは、周りの人々の温かい応援と励ましでした。   「何があってもず~っと一緒にいるから」と言ってくれる奥さん… 「代われるものなら代わってあげたい」と言うお母さん… 「腰塚さんの辛さは本当には分ってあげられないけど、私に出来ることは何でもしますから、我慢しないで言ってくださいね…」と声をかけてくれた看護師さん…   腰塚さんはこうした人々の深い愛情に包まれながら、「これからは、今のすべてを受け入れ、そのすべてに自分が責任を負い、すべてに感謝をしていこう」と心に誓います。   その後、厳しい困難なリハビリに取り組んだ結果、ついに4ヵ月後、現場復帰を果たすまでに回復するのです。主治医の先生も「首の骨を折ってここまで回復した患者は腰塚さんが初めてです」と驚嘆するほどの回復振りでした。   現場復帰に当たって、腰塚さんは次のような「五つの誓い」を立てます。 「口」は …、人を励ます言葉や感謝の言葉を言うために使おう   「耳」は …、人の言葉を最後まで聴いてあげるために使おう   「目」は …、人の良いところを見るために使おう   「手足」は…、人を助けるために使おう   「心」は …、人の痛みがわかるために使おう   この「誓い」は自分を助けてくれた人たちがしてくれたことを、今度は自分がしようという思いから生まれたものです。   腰塚さんはご今回の事故を振り返り、次のように語っています。(一部抜粋)   ・・・・私は首の骨を折るという大きな失敗をしました。しかし失敗したことによって、私の命が周りの人々、あらゆる命によって生かされ、支えられていることを知りました。失敗は決して悪いことではありません。本当に悪いことは、他人の所為(せい)や環境の所為などの言い訳をして何もしなくなることです。   人生はすべて自分が源で作られています。だからそのすべてに責任を負い、今のすべてを受け入れ、すべてに感謝していくことが大事なことです。どんな出来事も、すべて必要があって起こっているのです。何事も自分が成長し幸せになるための「学び」になるのです。   私は今でも下半身から下は余り感覚がありません。しかし、そのことがいつも私に「手足が当たり前に動くことの幸せ」を教え続けてくれています。だから麻痺して余り動かない右半身と下半身は私にとって「宝物」です。今は、そんな大切なことを気づかせてくれた事故に感謝しています。    「いつも笑顔でいよう」    「いつも感謝しよう」    「周りの人々の幸せを願おう」   これが私の原点です・・・・。   こう語る腰塚さんの生き方(人生観)は、まさに縁起の道理に立った仏教の人生観(縁起観・因果観)そのものだと言ってもいいでしょう。首の骨を折るというまことに厳しい試練に出遭いながら、その試練をしっかりと受け止め、ついにはその試練さえも恵みであったと感謝していく。   そんな腰塚さんのたくましい智慧ある生き方に深い感動を覚えます。   この「五つの誓い」の話は、私がまだ豊岡事業所の現場にいた頃に、介護職員の方(今も頑張ってくれているKさん)から教えてもらいました。「この五つの誓いを職場の皆が持つことができれば、とってもいい雰囲気の職場になるよね」と話したことを思い出して紹介させていただきました。